後日談『その日のあと』KKHplot
*ギアントロイド ヒガシ地区、落下地点[ポイント=ザイオン]にて*
その日は風が強かったなーとぼんやりアズタは思い出していた。
余り物の「落物」が積み重なる小高い丘の上に座ってぼーっとしている。後ろからちゃり、ちゃり、とガラクタを踏みしめて登ってくるのは全身防護服の男。
「どうだい調子は」
そう言って小さな煙草の箱を投げてよこす。
カルムザイオン土産にいつも持ってくる安いヤツだ。
アズタは受け取って、一本取る。
「特に…元気だよ」
「…」
男は立ったまま黙って遠くを見ている。
「ひとつわかった事がある」
「む、是非お聞かせ願いたい」
「ヒトってのは 死ぬ瞬間ってのがあるだろ?明確に…この日、この時間 ってのがさ…だからその瞬間を境に 死ぬモンだと思ってたわけよ」
「ふむ」
「でも実際には違ったな ゆるやかだ、もっと」
「…」
「ゆっくりと 少しずつ死んでいくんだ、現に、この前から明らかに“死”が大きくなっている感触がする」
「…そのとおりだね」
「センセイも同意見か?」
「まあ…私だけじゃない 古今東西 あらゆる学者や 文筆家や 思想家たちが、それについて考えてきたんだ もちろん違う意見の人もいる…ヒトにとって 永遠のテーマだからね」
「ふうん」
「-----が亡くなった今 君の身体を治す術は空にしかない…定期的に見にくるよ!」
「あー… なんつーか 別に頼んだ覚えはないんだが…」
「気にしないでくれ!予算消費のためでもあるんだよ 球体学研究の部は年々予算削られているからもう少しちゃんと使わないと…」
「それ俺関係なくね?」
「一応…フィールドワークのための、現地の案内人ってことになってるから」