なんかの後日談『大技が決まらない』
「はぁ」
《ベル通信所》は、先の大騒動で受けた損傷の後処理で大忙しだった。
ふたり組になったワドルディが、ぽてぽてと廊下を歩いている。
どちらも山積みになった書籍を頭の上に掲げている。
「どうしたんスかー?ため息とは!」
「きょう、残業でスー。どうしても大技の名前が決まらないって、所長が…」
「ええ?!」
「またあの長い会議に付き合うのでスー」
「それはそれは…」
ごしょーしゅーさまです、と片方のワドルディは返した…言えてない。
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「あのね、ど〜〜も僕ちん、戦闘にガツンと使える大技が足りてないわけ。でね、練習してるのがあるんだけど〜、うまくいかないんだわ。何故か?って、僕ちん考えた!その理由はずばり!技名がね、イケてないと思うわけよ!」
《ベル通信所》所長・ディン(コードネーム:BELL)[所持コピー能力:ベル]は、饒舌にペラペラ話し始める。会議室には、5体ほどのワドルディたちが集められていた。皆、連日の出勤で憔悴しきっているようだ。大きな黒板には、小さい丸文字で新技大会議、とだけ書かれている。
「いろいろね、僕ちん、考えたんですよ!ほらみてこれ!」
ババーン!
目をキラキラさせて、ディンは模造紙を広げた。そこには20,30くらいだろうか…たくさん技名候補が書かれている。
「ねーねー、どお?いちばん気に入ってるのはさ、”デストロイ・リンドン”とかなんだけどぉー…強そうじゃない?!ちょっとゴテゴテしてるかな?可愛さってやっぱ重要だよねん…」
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「おそれながら、しょちょー、ご自身のお名前とかいかがでスか?」
「そ、そうっスよ!シンプルながら、いい案では?!」
「それに、いちばんひょうばんが良さそうな”コーダ”、”フィナーレ”あたりの音楽よーごを組み合わせれば華やかな感じに…!」
「…」
ディンは、キィィと椅子を回転させてゆっくりと振り返った。
「たとえばでスね…《ディン・フィナー…》」
「それ………!」
言葉を遮ったディンが大きく目を見開いているので、ワドルディ達は思わず息をのむ。数時間に及ぶ会議に一筋の光が差し込んでくるようだ…!
「いっちばん、ありえないから!」
わにゃわにゃわにゃ…… ワドルディたちはいっせいに目をバッテンにして突っ伏す。
「技に自分のナマエを付けるなんて、それね、一番やっちゃいけないやつぅ!イタいやつー!」
「…。」
「いーくーらー自己顕示欲のカタマリのような僕ちんでも!さすがに気が引けちゃう!」
自覚してるんスね…と呟いたワドルディを、ディンは凝視する。
「何か言った?」
「いえ何も」
一同はがっくりとうなだれて、だれひとり顔をあげようとしない。
「ありゃ?どしたの?みんな〜?おいおいっ」
「我々には、これ以上なにも思いつかないですー…」
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ちょっとメタい話しでしたね